ディスプレイ仕様(スペック)の基本ガイド 〜用語とその意味を理解して品質を見極めよう〜

ディスプレイというと「有機EL」や「4K」など耳にしたことがあるけど、実際にそれが何なのか分からない という方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事ではディスプレイの基本的な知識はもちろん、少し専門的な部分についても解説します!
ディスプレイ仕様表「それぞれが何を意味しているのか分かる」というところまで理解を深めて貰えればと思います。

ディスプレイの仕様で何が分かる?

例えば、スマホやタブレットなどを選ぶ際に「ディスプレイ表示が綺麗かどうか」って結構重要なポイントですよね?

ディスプレイ仕様を確認することで「ディスプレイの表示品質」を把握することができます。つまり、そのディスプレイが「どのくらい綺麗な画質で表示できるのか」が分かるというわけです。

ディスプレイ仕様の具体例

まずは具体例として、いくつかスマホやタブレット端末のディスプレイ仕様を確認してみましょう。

  • Super Retina XDRディスプレイ
  • 6.1インチ(対角)オールスクリーンOLEDディスプレイ
  • 2,532 x 1,170ピクセル解像度、460ppi
  • HDRディスプレイ
  • True Tone
  • 広色域(P3)
  • 触覚タッチ
  • 2,000,000:1コントラスト比(標準)
  • 最大輝度800ニト(標準)、ピーク輝度1,200ニト(HDR)
  • 耐指紋性撥油コーティング
  • 複数の言語と文字の同時表示をサポート
  • サイズ:約11.6インチ
  • 画面占有率:88.14%
  • 解像度:2800 x 2000
  • リフレッシュレート:最大144Hz
  • タッチサンプリングレート:120/144Hz
  • 色域:NTSC カバー率96%、DCI-P3 カバー率97.4%
  • 色差:DeltaE<2
  • 色彩深度:10億色
  • ピクセル密度:296PPI
  • 輝度:500nit
  • パネルタイプ:LCD (LTPS)
  • WQHD+ 6.73インチAMOLED
  • 3200 x 1440、522ppi
  • LTPO、AdaptiveSync Pro
  • リフレッシュレート:ダイナミック1~120Hz
  • タッチサンプリングレート:最大240Hz
  • OLED材料タイプ:XiaomiカスタムC8ディスプレイパネル
  • 輝度:HBM 1000nit(標準値)、3000nit(ピーク輝度)
  • Pro HDRディスプレイ、UltraHDRをサポート
  • Dolby Vision、HDR10+
  • 680億色
  • 色域:DCI-P3
  • TrueColorディスプレイ
  • アダプティブカラー
  • オリジナルカラープロ
  • アダプティブ読書モード
  • サンライトモード
  • DC調光/1920Hz PWM調光
  • TÜV Rheinland低ブルーライト(ハードウェアソリューション)認証済み
  • TÜV Rheinlandフリッカーフリー認証済み
  • TÜV Rheinlandサーカディアンフレンドリー認証済みXiaomi Shield Glass

どうですか?

それぞれ「どこがが優れているのか」「どこがイマイチなのか」分かりますか?

正直聞いたことない用語も多いかと思います。しかし、それぞれ何を意味しているのか理解できれば、これらの仕様を見るだけでディスプレイの良し悪しをある程度見分けることが可能になります。

ディスプレイの基本情報の内容

メーカーによって表記内容が大雑把だったりもしますが、一般的に「ディスプレイの仕様」として表記される情報には以下のようなものがあります。

では、それぞれの項目について詳しく解説していきたいと思います!

ディスプレイパネルの種類

2024年現在、スマホやテレビ・タブレット端末・PCモニターなど多くのディスプレイで、液晶もしくは有機EL (OLED) が利用されています。

液晶・有機ELともに技術進歩が著しく、それぞれデメリットを克服するような技術も登場しているため、甲乙つけがたい状態です。ただ、近年の傾向としては有機ELが徐々にシェアを拡大しており、今後さらに多くのデバイスで採用されることが予想されています。

液晶パネル

液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)は、バックライト(光源)からの光を液晶カラーフィルターを用いて画像表示させるディスプレイ技術

液晶ディスプレイの基本構成

液晶ディスプレイは以下のような「」で構成されています。

カバーガラス外部の衝撃や傷からディスプレイを保護。
タッチセンサーレイヤータッチ入力を感知。
偏光フィルター(前面)カラーフィルターを通過した光を再び偏光し、最終的な画像品質を向上させる。
ガラス基板(前面)液晶層やカラーフィルター層を支える。
カラーフィルター層各画素は3つのサブピクセルで構成されており、それぞれに赤(R)・緑(G)・青(B)の「カラーフィルター」を1つずつ配置。バックライトからの光がこのカラーフィルターを通過することで、各画素の中に赤・緑・青の光が生成される。赤・緑・青は光の三原色なので、この組み合わせによりその他の色を表現できる。
液晶層各画素のサブピクセルに配置された「液晶セル」が光の透過率を調整することで明るさを制御。これにより、カラーフィルター層を通過して生成される赤・緑・青の光は濃淡を表現できる。そして、これらを組み合わせることで様々な色を表示することが可能となる。
ガラス基板(後面)液晶層やカラーフィルター層を支える。
偏光フィルター(後面)バックライトからの光を偏光する。光が一方向に揃うことで、液晶分子が光の透過を制御するのに役立つ。
バックライト層均一な白色光を発する。現在LEDバックライトが一般的。

液晶は電界によって分子の向きを変えることができるという性質を持っており、液晶層に「液晶セル」として配置されています。この液晶セルに電気信号を送って液晶分子を配置変化させることで、バックライトからの光を通す量(透過率)を調整しています。

メリット・デメリット
メリット
  • 低コスト:製造コストが低く、スマホやタブレットなどの製品価格を抑えられる
  • 高輝度:高い輝度を容易に実現でき、屋外や明るい場所でも見やすい
  • 長寿命:焼き付きの心配がなく長寿命
デメリット
  • コントラスト比が低い:バックライトを利用するため完全な黒を表示できない
  • 視野角が狭い:角度によって色の変化や輝度の低下が見られる場合がある
  • 応答速度が遅い:動きの速い映像でブレや遅延が発生することがある
  • 電力消費が高い:バックライトが常に点灯しているため、全体的に消費電力が高くなることがある

有機EL(OLED)パネル

有機EL(Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイは、電気信号を直接光に変換する有機EL素子を用いて画像を表示するディスプレイ技術

有機ELディスプレイの基本構成

有機ELディスプレイは以下のような「」で構成されています。

カバーガラス外部の衝撃や傷からディスプレイを保護する。
タッチセンサーレイヤータッチ入力を感知する。
封止層有機層を外部の湿気や酸素から保護する。
陽極有機発光層の上に配置される透明な導電性層で、正の電荷を供給する。
有機EL層電流が流れることで有機EL素子自体が発光する。
基本的には、各画素の中に「赤・緑・青」それぞれの色を発光する有機EL素子が配置され、これらの色を組み合わせて、様々な色を表現するという仕組みになっている。
陰極基板の上に配置される金属層で、電子を供給する。
基板ディスプレイ全体を支える基礎部分で、ガラス・金属箔・プラスチックなどで作られる。

有機EL素子は、有機化合物から構成された薄膜で、この薄膜を挟んで陽極と陰極が配置されています。有機EL素子に電気信号を加えると、陽極から陰極への電流が流れて有機化合物が励起状態になり、放出されたエネルギーによって発光を引き起こします。この発光により有機EL素子から直接光が出て、画像を表示することができるというわけです。

メリット・デメリット
メリット
  • 高コントラスト比:完全な黒を表現でき、色の再現性に優れる
  • 視野角が広い:どの角度から見ても色や輝度の変化が少ない
  • 応答速度が速い:速い映像でブレが少ない
  • デザインの柔軟性:薄型・軽量を実現しやすく、折りたたみ式や曲面ディスプレイなどのデザインも可能
  • 省電力:特定の画素だけ発光するため、黒が多い表示では消費電力が低い
デメリット
  • コストが高い:液晶に比べ製造コストが高く、製品価格が高くなることが多い
  • 焼き付き:長時間同じ画面を表示すると焼き付きが発生するリスクがある
  • 寿命:有機材料の劣化により、青色の寿命が他の色に比べて短いという問題があるが、技術の進歩で改善されつつある
  • 高輝度の限界:高輝度を長時間維持するのが難しいため、全体的な輝度が低くなることがある
「焼き付き」とは?

特定の画像やパターンが長時間表示された結果、画面に残留する現象。
最近のOLEDディスプレイでは、画像のリフレッシュや画素の均一な使用を促進するための技術が進化しています。これにより、焼き付き現象のリスクが低減されていますが、長時間使用や特定の使用パターンには依然として注意が必要です。

パネル方式 とは?

  • パネル
    一般的に液晶有機ELなどのディスプレイ技術を指す
  • パネル方式
    液晶や有機ELなどのディスプレイ技術において、特に画面を構成する構造素材の違いを指す場合が多い

液晶ディスプレイの「パネル方式」

パネルパネル方式
液晶(LCD)駆動方式
=画素の制御方法
アクティブマトリックス方式
パッシブマトリックス方式
表示方式
=液晶の配置方法
TN方式、VA方式、IPS方式 など
バックライト方式
=バックライトの種類や配置の違い
冷陰極蛍光ランプ、LED
直下型、エッジ型

液晶ディスプレイにおける「パネル方式」と言うと、一般的には「表示方式の違い」について表記される事が多いです。

駆動方式

駆動方式とは、液晶や有機ELなどのディスプレイ技術における画素の制御方法を指します。現在、アクティブマトリックス方式が主流で、スマホやタブレット、ノートPC、モニター、テレビなど多くのディスプレイに採用されています。

各画素のサブピクセルを薄膜はくまくトランジスタ(TFT)によって個別に制御する方式。

主な特徴
  • 各画素の独立制御:各画素は「赤(R)・緑(G)・青(B)」それぞれの光を生成するサブピクセルで構成されており、このサブピクセルを個別に制御することで、より精密な色を表現が可能になる。
  • 高速応答TFTが電圧のオン/オフを迅速に行うため、画面の応答速度が非常に速くなる。
  • 高解像度高密度なピクセル配置が可能になるため、高解像度での表示ができる。

液晶ディスプレイの場合」は、薄膜トランジスタ(TFT)が各サブピクセルに配置された「液晶セル」にかける電圧を制御することで、透過率(バックライトからの光を通す量)を調整しています。これにより、各サブピクセルは「赤・緑・青」の濃淡を変えることができ、その組み合わせにより精密で鮮やかな色表現ができます。

表示方式

表示方式は液晶分子の配置方法の違いを指します。

主な表示方式
  • TN方式
    液晶分子がねじれた配置を持ち、電圧をかけると液晶分子が直立する。速い応答速度と低コストが特徴だが、視野角と色再現性が劣る。
  • VA方式
    液晶分子が垂直に配置され、電圧をかけると水平に移動する。高いコントラスト比で深い黒を実現できるが、応答速度と色再現性がやや劣る。
  • IPS方式
    液晶分子が平行に配置され、電圧をかけても平行に動く。広い視野角と高い色再現性を持ち、どの角度からも鮮やかに見えるが、コストが高い。

それぞれの特徴を比較すると以下のようになります。

TNVAIPS
視野角*狭い中程度広い
色再現性*低い中程度高い
コントラスト比*低い高い中程度
応答速度*非常に速い中程度やや遅い
価格安価中程度高価
おすすめ用途ゲーミング動画鑑賞(明暗の表現力が優れているので、特に映画鑑賞がおすすめ)動画鑑賞、グラフィックデザイン、映像編集など

現在最も主流なのはIPS方式で、スマホやタブレット端末、PCモニターなど多くの製品に採用されています。TN方式は主にゲーミングモニターやコスト重視のオフィスモニターに使用され、VA方式はテレビや高画質モニター、映画鑑賞向けのディスプレイに使用される事が多いです。

バックライト方式

バックライト方式は、液晶ディスプレイの光源であるバックライトの種類や配置方法の違いを指します。現在バックライトの種類はLEDが主流で、配置方法はエッジ型(お手頃価格のテレビで主流)直下型(高画質を重視する製品で主流)があります。

バックライト(LED)をディスプレイの周囲に配置し、光を画面全体に拡散させる方式。手頃な価格帯のテレビやモニターで採用されることが多いです。

メリット
  • 直下型に比べてコストが抑えられる
  • 全体を薄く設計できる
  • 省エネ
デメリット
  • 細かく局所的に光量を調整できないため、コントラスト(特に黒の表現)が劣る
  • 画面の端に光漏れが発生することがある(特に暗いシーンで目立つ)

バックライト(LED)をディスプレイの裏側に均等に配置し、直接画面を照らす方式。スマホやタブレット端末などの小型デバイス、高画質なテレビやモニターで採用されことが多いです。

メリット
  • LEDが画面全体に配置されているため、細かい局所的な調光が可能でコントラストが高くなる
  • 画面全体に均一な明るさを提供する
  • 局所的な調光が可能でより深い黒を表現ができる
デメリット
  • エッジ型に比べ厚みのある設計
  • エッジ型に比べコストが高くなる
ミニLED(Mini LED)は「バックライト方式」の1つ!

最近「ミニLEDテレビ」や「Mini LEDモニター」など ミニLED(Mini LED)という言葉を耳にする機会が増えましたが、これはLED+直下型のバックライト方式の1つになります。

ミニLEDでは、光源(バックライト)に0.1mm以下と非常に細かいLEDを使用。従来よりも最大輝度が高くなるだけでなく、明暗の細かな調節も可能になっています。そのため、鮮やかな色の表現(特に黒は白っぽさのないより深い黒色)となり、引き締まった映像が楽しめます。

有機ELディスプレイの「パネル方式」

パネルパネル方式
有機EL(OLED)駆動方式
=画素の制御方法
アクティブマトリックス方式(AMOLED)
パッシブマトリックス方式(PMOLED)
カラー発光方式
=色を生成する方法
RGB方式、WOLED方式、PHOLED方式、タンデム方式 など
基板方式
=基板の材質や形状の違い
材質:ガラス、金属箔、プラスチック(POLED)など
形状:フレキシブル(Flexible)、折りたたみ(Foldable)、巻取り(Rollable)など

有機ELディスプレイのパネル方式については特に表記されないことも多いですが、一応それぞれの方式について簡単に説明しておきます。

駆動方式

駆動方式は、液晶や有機ELなどのディスプレイ技術におけるピクセル(画素)の制御方法を指します。有機EL(OLED)ディスプレイの駆動方式も液晶パネルと同様にアクティブマトリックス方式が主流です。

仕様表に「AMOLED」と表記されることがありますが、これはアクティブマトリックス(active-matrix)方式の有機ELディスプレイという意味になります。

各画素のサブピクセルを薄膜はくまくトランジスタ(TFT)によって個別に制御する方式。

主な特徴
  • 各画素の独立制御:各画素は「赤(R)・緑(G)・青(B)」それぞれの光を生成するサブピクセルで構成されており、このサブピクセルを個別に制御することで、より精密な色を表現が可能になる。
  • 高速応答TFTが電圧のオン/オフを迅速に行うため、画面の応答速度が非常に速くなる。
  • 高解像度高密度なピクセル配置が可能になるため、高解像度での表示ができる。

AMOLEDの場合」は、薄膜トランジスタ(TFT)が各サブピクセルに供給される電流を調節することで、発光強度を変えます。これにより、各サブピクセルは「赤・緑・青」の濃淡を変えることができ、その組み合わせにより精密で鮮やかな色表現ができます。

カラー発光方式

有機ELディスプレイは、各画素のサブピクセルに配置された「赤(R)・緑(G)・青(B) の有機物質」が直接発光するというのが基本的な仕組みですが、このカラー発光方式にはいくつか分類があります。

主なカラー発光方式
  • RGB OLED方式
    各画素に光の三原色である「赤・緑・青」に発光する有機EL素子を配列した方式。
    色再現性が高く、色の深みや鮮やかさが出やすいため、高品質な表示が可能。スマホなどの小型の有機ELディスプレイではこの方式が主流となっている。
  • WOLED方式
    白色発光する有機EL素子に、赤・緑・青のカラーフィルターを重ね合わせることで色を生成する方式。
    均一な色再現性とエネルギー効率の向上が特徴で、主にテレビなどの大型ディスプレイで採用される。
  • PHOLED方式
    リン光物質を有機EL層に含ませた方式。
    リン光物質を用いることで、高い発光効率と省エネ性を長寿命を実現。主にスマホやテレビ等のハイエンドモデルで採用される。
  • タンデムOLED方式
    複数の有機層を積層することで、発光効率や寿命を向上させる技術。
    厳密にはカラー発光方式というよりも「発光素子の配置や設計方法」を指す。最新のiPad Pro (M4)に採用されている。

基板方式

基板はディスプレイ全体を支える土台のような役割を果たします。基板方式は、基板の素材形状で分類されます。

主な基板の素材
  • ガラス基板
    最も一般的な基板。平坦性と光学特性に優れ、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどの高品質な画面表示を実現するために使用されます。
  • 金属箔基板
    薄くて柔軟性がある一方でありながら、耐久性と強度に優れてた基板。エッジディスプレイ(曲面ディスプレイ)や折りたたみ式ディスプレイ などの用途に適しています。
  • プラスチック基板(POLED):
    柔軟性や耐衝撃性に優れ、軽量でありながらも耐久性に優れた基板。エッジディスプレイ(曲面ディスプレイ)や折りたたみ式ディスプレイ、巻取り式ディスプレイに採用されています。
主な基板の形状

標準的な平面基板(フラット基板)以外にも、以下のような形状があります。

  • フレキシブル(Flexible)
    柔軟性があり、曲げることができる基板。曲面ディスプレイや湾曲したデザインのデバイスに使用される。
  • 折りたたみ(Foldable)
    フレキシブル基板の一種で、特に折りたたむことができる設計がされているもの。折りたたみスマートフォンやタブレットに使用される。
  • 巻取り(Rollable)
    基板が巻き取れる特性を持つもの。巻き取り式ディスプレイなど、コンパクトに収納できるデザインに使用される。

解像度

ディスプレイに並んでいる画素(ピクセル)の数を示すもので、表示される画像やビデオの精細度や鮮明度を決定する要素の1つ。一般的に画面の「横のピクセル×縦のピクセル数」で表されます。

代表的なものとしては以下です。

  • 1920×1080(FHD)
  • 1920×1200(WUXGA)
  • 2560×1440(WQHD)
  • 2560×1600(WQXGA)
  • 3840×2160(4K)
  • 7680×4320(8K)

※FHD+ や WQHD+ ように「+」が表記されている場合は、それよりも高い解像度を意味します。

画素密度(PPI)

画素密度 (PPI:Pixels Per Inch) とは、1インチあたりに表示されるピクセル数のことで、ディスプレイの精細度を評価する重要な指標です。特にスマートフォンやタブレットなどの小型ディスプレイの画質評価によく使用されます。

基本的に、この画素密度(PPI)が高いほど、ディスプレイ表示がより細やかで鮮明になります。

ただし、これは画質を決定する要素の1つに過ぎません。画質は「精細さ」以外にも「色表現」や「明るさ」なども関係してきます。そのため、画素密度以外の要素もしっかりと確認して判断することが重要です。

PPI=√(縦ピクセル2+ 横ピクセル2)÷画面サイズ

例として「iPad(第10世代)」と「Xiaomi Pad 5」の画素密度(ppi)を計算して比較してみます。

iPad(10世代)Xiaomi Pad 5
画面サイズ10.9インチ11インチ
解像度(縦ピクセル×横ピクセル)2360×16402560×1600

計算すると、iPad(第10世代)は「約264ppi」、Xiaomi Pad 5は「約274pp」となりました。

この結果から、スペック上では「Xiaomi Pad 5」の方がより高精細なディスプレイということが分かります。

アスペクト比

アスペクト比とは、ディスプレイおける横幅と縦幅の比率のことです。例えば、先述した解像度では、アスペクト比は以下のようになります。

アスペクト比解像度
16:91920×1080(FHD)
2560×1440(WQHD)
3840×2160(4K)
7680×4320(8K)
16:101920×1200(WUXGA)
2560×1600(WQXGA)

現在、スマホでは「20:9」や「21:9」、テレビでは「16:9」、ノートPCやタブレットでは「16:9」や「16:10」 というのが一般的。主にノートPC・PCモニター・タブレット端末を選ぶ際の重要ポイントとなります。

アスペクト比の違いは「表示される情報量」に影響を与えます。特に上の画像のように、縦方向の情報の表示量が増えることで「ブラウジング」や「オフィスソフトの利用」がより快適になります。

色域

ディスプレイの色域は、そのディスプレイが再現できる色の範囲を指します。色域が広いほど、発色がよく鮮やかなディスプレイ表示が可能です。

色域の規格として代表的なものは以下です。

主な色域の規格
  • sRGB
    デジタル画像の標準的な色域。一般的なディスプレイやWebで使われています。
  • Adobe RGB
    sRGBよりも広い色域。特に写真やグラフィックデザインなどの分野で使用されます。
  • DCI-P3
    デジタルシネマ用に開発された色域。sRGBよりも広い色域で、特に青や緑の色域が拡大され、映画の視覚効果に適しています。
  • Display P3
    Appleが「DCI-P3」を基に開発した色域。より一般消費者向けに調整された色再現範囲を持ちます。

色域の表記例

  • 色域の規格+パーセント(%) 表記
    • 「sRGB 61%」「DCI-P3 100%」など
  • 色域の規格のみ(パーセント表示無し)表記
    • 「sRGBをサポート」「DCI-P3」など

一般的に色域の表記は「色域の規格パーセント(%)」で表示されます。ただし、中には「sRGB」や「DCI-P3をサポート」というように、パーセント(%)の表示がない場合もあります。この場合はその色域を100%再現できるものと考えてもらって大丈夫です。

色深度

ディスプレイの色深度は、各画素が表示できる色の数を指します。色深度が高いほど、より滑らかなグラデーションや細かい色の変化を表現できます。

一般的な色深度は以下の3つです。

8bit(24bit)各画素にある3つのカラーチャンネル(赤、緑、青)各色に 8bit=28(=256)階調の濃淡が割り当てられ、28×28×28=1677万7216(約1677万)色表示できる。
10bit(30bit)各画素にある3つのカラーチャンネル(赤、緑、青)各色に 10bit(=1024)階調の濃淡が割り当てられ、210×210×210=10億7374万1824(約10億7000万)色表示できる。
12bit(36bit)各画素にある3つのカラーチャンネル(赤、緑、青)各色に 12bit(=4096)階調の濃淡が割り当てられ、212×212×212=687億1947万6736(約687億)色表示できる。

液晶とOLEDでの色表現の違い

液晶ディスプレイの色表現
  • カラーフィルターでRGBを表現
    • 各ピクセルは、光の三原色である赤(R)・緑(G)・青(B)を表現する3つのサブピクセルで構成。それぞれ赤・緑・青のカラーフィルターが配置されており、バックライトからの白色光がこれらのカラーフィルターを通過することで、これらの色が生成されます。
  • バックライトの透過率を調整しRGBの階調を表現
    • バックライトの透過率を調整することで、サブピクセルの明るさを制御。これにより赤(R)・緑(G)・青(B)それぞれの濃淡を表現することが可能です。そして、このサブピクセルの組み合わせによって、各画素では1つの色が表示されます。
有機EL ディスプレイの色表現
  • RGBはそれぞれに対応した有機物質が表現
    • 各ピクセルは、光の三原色である赤(R)・緑(G)・青(B)を表現する3つのサブピクセルで構成。それぞれ赤・緑・青の有機物質が配置されており、有機物質が電流を受けて自発光することで、これらの色が生成されます。
  • 発光強度を調整することで階調を表現
    • 発光強度を調整することで、サブピクセルの明るさを制御。これにより赤(R)・緑(G)・青(B)それぞれの濃淡を表現することが可能です。そして、このサブピクセルの組み合わせによって、各画素では1つの色が表示されます。

つまり、「色深度」というのは、液晶ディスプレイでは透過率の調整能力有機ELディスプレイでは発光強度の調整能力を示しているわけです。

輝度

光の明るさを表す物理量。ディスプレイの輝度を表す場合の単位はnits(ニト)が一般的です。高輝度のディスプレイは、明るい環境でも画面が見やすく、コントラストが際立つように設計されています。

ディスプレイの輝度には以下のような種類があります。

標準輝度通常の使用時にディスプレイが達する明るさ。
最大輝度ディスプレイが通常の使用条件で持続的に発揮できる明るさの上限。
ピーク輝度特定のシーンや条件下で一時的に達する最大の明るさ。
高いピーク輝度は、映像品質の向上(明るいシーンをよりリアルにする)や 屋外での視認性向上(直射日光下でも画面が見やすい)などの利点があります。

また、輝度の種類とは別にHBM(High Brightness Mode)という輝度設定があります。これは、一時的にディスプレイの輝度を通常の最大輝度を超えて引き上げ、特に明るい環境での視認性を向上させるモードです。

コントラスト比

ディスプレイの明暗の差を指す指標。具体的には「最も明るい白」と「最も暗い黒」の輝度の比率を示します。高いコントラスト比では色彩の深みや立体感を強調され、よりリアルで鮮明な映像表現を可能とします

一般的なコントラスト比の値
  • 液晶ディスプレイの場合
    • 「1000:1」〜「3000:1」

液晶ディスプレイはコントラストが低い傾向にありますが、それはバックライトの透過率を調整するという仕組み上、完全な黒を表示することが難しいためです。黒を表現する際にバックライトがついたままになるので、黒が白っぽくなってしまいます。

  • 有機ELディスプレイの場合
    • 「100,000:1」以上

有機ELディスプレイは、バックライトではなく自発光素子を使用するため、黒を表示する際は発光しません。そのため、完全な黒の表示が可能となり、液晶ディスプレイよりも高いコントラストが実現できるわけです。

HDR

HDR(High Dynamic Range)は、映像や画像の明るさや色の範囲を拡大し、よりリアルで鮮やかな表示を可能にする映像の規格・技術です。

従来のSDR(Standard Dynamic Range)よりも、広い輝度範囲と広い色域、そして高い色深度を提供します。これにより、明るい部分と暗い部分のディテールが豊かになり、自然で鮮やかな色彩を再現できます。

HDRには以下のような規格があります。

色深度最大輝度メタデータ概要
HDR1010bit最大1000ニト静的最も普及しているHDR規格。静的メタデータを使用しているため映像全体で1つの設定が適用される。
HDR10+10bit最大1000ニト以上動的HDR10を拡張した規格。動的メタデータを使用し、シーンごとに最適な明るさとコントラストを調整
Dolby Vision最大12bit最大4000ニト動的Dolbyが開発したHDR規格。動的メタデータを活用して、シーンごとに最適な映像を提供
HLG10bit機器に依存なしBBCとNHKが共同開発した規格。放送に適しており、HDRとSDRの互換性が高い。

※「Pro HDR」や「Ultra HDR」といった表記は具体的な規格ではなく、メーカーが製品のHDR技術を強調するために使用するマーケティング用語になります。

コンテンツ側も対応する必要あり

ディスプレイ仕様にHDR、HDR10+、Dolby Vision対応という表記があっても、コンテンツ側(動画やゲーム)が対応していなければ、これらのHDR規格での映像体験はできません。

デバイス側コンテンツ側が同じHDR規格に対応している場合に限り、そのHDR規格の効果をもたらします。

結局のところ「色域・色深度・輝度・コントラスト比」が重要

HDRはあくまで映像の規格なので、同じHDR規格に対応したデバイスであっても、ディスプレイ性能によって表示品質に差が出ます

つまり、HDRの効果を引き出すには

  • 幅広い色表現と豊かな階調を可能にする色域色深度
  • 明暗の幅を広げ、リアルで鮮明な映像を実現する輝度コントラスト比

が重要で、単純に高性能なディスプレイである事が望ましいというわけです。

リフレッシュレート

リフレッシュレートとはディスプレイが1秒間に画面を何回更新するかを示す指標です。単位はヘルツ(Hz)表されます。一般的なディスプレイでは「60Hz」が標準値となっており、1秒間に60回の画面更新が行われています。

高リフレッシュレートは映像を滑らかにする

リフレッシュレートが高いほど画面の更新回数が多くなるため映像は滑らかになります。具体的には以下のような効果があります。

  • スマホやタブレットの画面をスクロールした時に、文字がぼやけることなく滑らかにスクロールができる
  • ゲームスポーツ観戦などの動きの速いシーンにおいて、ブレや引っ掛かりが低減されることで、より滑らかな映像になる

ただし、高リフレッシュレートは消費電力が増加します。

映像を滑らかにするには FPS(フレームレート)も重要!

高リフレッシュレートには確かに映像を滑らかにする効果があります。ただ、ゲームやスポーツ観戦などの映像が滑らかにするにはFPS(フレームレート)も重要です。

FPS(フレームレート)とは、動画コンテンツやゲームが1秒間に生成するフレーム(静止画)数を示す指標で、60FPSのコンテンツは1秒間に60フレームが生成されます。

リフレッシュレートとFPSの関係について
リフレッシュレートディスプレイが1秒間に画面を更新する回数
ディスプレイ側の設定
FPS(フレームレート)動画コンテンツやゲームなどが1秒間に生成する静止画の数
動画コンテンツ側の設定

リフレッシュレートとFPS(フレームレート)は相互に関連しています。そのため、「高リフレッシュレート+低FPS」や「低リフレッシュレート+高FPS」という場合、そのパフォーマンスを十分に活かすことができません。

例えば、60fpsに設定したゲームをリフレッシュレート「120Hz60Hz30Hz」で動作させると、それぞれ以下のようになります。

  • 120Hzの場合[リフレッシュレート>FPS]
    • 映像の滑らかさは60Hzの場合[リフレッシュレート=FPS]と同等になります。ただし、操作の応答性は60Hzよりも高くなるため、特に高速な動きやリアクションが求められるゲームでは操作性が向上します。
  • 60Hzの場合[リフレッシュレート=FPS]
    • 映像が最も滑らかになる理想的な設定。滑らかな映像と良好な操作感が得られます。
  • 30Hzの場合[リフレッシュレート<FPS]
    • 映像の滑らかさが損なわれ、カクつきが発生したりする可能性があります。さらに応答性も低下します。

「映像の滑らかさ」や「電力消費の効率性」といった点から、リフレッシュレートFPSは一致させることが望ましいと言えます。

FPSに合わせて自動でリフレッシュレートを調節する技術

ハイエンド端末では、リフレッシュレートを常に最適な状態に維持する機能を搭載していることが多いです。例えば、「Adaptive Sync」や「ProMotionテクノロジー」などの表記があれば、リフレッシュレートを動的に調節してくれます。

AMDが開発し、VESA(映像機器やディスプレイ技術に関する標準を策定する業界団体)によって標準化された可変リフレッシュレート技術。ハイエンドのAndroid端末に採用されることが多いです。
FPS(フレームレート)とリフレッシュレートを動的に同期させることで、映像のティアリング(画面のズレ)やスタッタリング(カクつき)を軽減し、滑らかな表示を実現します。

Appleが開発した動的リフレッシュレート技術で、iPad Proシリーズ や iPhone Proシリーズに搭載されています。リフレッシュレートを10Hzから120Hzまで動的に調整し、滑らかなスクロールや高レスポンスのタッチ操作を提供しつつ、電力消費を抑えます。

タッチサンプリングレート

画面上でのタッチ操作をどれだけ精密に検知・反応させるかを示す指標。具体的には、1秒間に何回デバイスがタッチ入力を検出するかを表します。例えば、タッチサンプリングレートが120Hzの場合、デバイスは1秒間に120回タッチを検知し、その反応を画面表示させることを意味します。

タッチサンプリングレートが高いほど、タッチ操作の応答速度が向上し、より正確なタッチ入力が可能です。最新のミッドレンジ端末では最大120Hz〜240Hzに対応していることが多く、この辺が現在(2024年)の標準値と言えます。

表記がない場合は?

未表記の項目に関しては、基本的に「標準的な仕様」もしくは「あまり良い仕様ではない」のどちらかになります。

まとめ

ディスプレイ仕様で、特に押さえておきたいポイントは以下になります。

精細さ (画質の細かさ)画素密度 (ppi)
画面サイズと解像度に基づいて、1インチあたりのピクセル数を示す
色の表現色域色深度
ディスプレイが表示できる色の範囲、色の階調を表す
明るさ輝度
最大輝度を示し、ディスプレイがどれだけ明るく表示できるかを表す
明暗の表現力コントラスト比
明るい部分と暗い部分の差を表し、詳細な画像表現に影響する
映像の滑らかさリフレッシュレート
画面の更新速度を示し、映像やアニメーションのスムーズさに影響します

これらの仕様が「ディスプレイ性能」にかなり影響しています。そのため、スマホやタブレットなどを購入する際には、ぜひ確認するようにしてみましょう!